「恋するように『健康』について考えて」
保健師 板垣文緒 さん

板垣文緒さん__1_のコピー

14年冬と15年の夏、練馬区が主催した「温活女子講座」には、多くの若い女性の参加者が集まりました。 主催したのは健康部健康推進課の 「健恋7係(けんこいナナかかり)」プロジェクト。 そのユニークなネーミングと、「行政らしくない」アプローチが新鮮と話題に。プロジェクトメンバーの中心となって活躍している板垣さんにお話をお聞きしました。課内横断プロジェクト「健恋7係」とは?

 

健康推進課7番目の係

私の所属する健康部健康推進課は、区民の健康づくりや検診の受診等について啓発をするのが仕事です。健康推進課の各係がそれぞれ、区民の健康づくりを支援する活動を行っていますが、その中で、区民の皆さまにより積極的に健康に関心を持っていただくことが大きな課題でした。

そこで広報戦略について、課全体で考えようということで、6つの係を横断的につなぐプロジェクトを2014年7月に立ち上げました。それが「健恋7係」です。このプロジェクト名には、区民の皆さまに「恋」するように健康のことを想ってほしい、職員も「恋」するような熱い想いで健康について伝えたいという思いと、健康推進課の「7番目の係」という意味が込められています。20くらいの候補名をメンバーがそれぞれ出し合って、その中から、みんなで選んで決めました。現在、私を含めて8名のメンバーが参加しています。

学園祭での子宮がん検診PR900

健恋7係が最初に行った取り組みは2014年11月、練馬区内にある日本大学藝術学部で 行われた「芸術祭」への出展です。こちらは毎年開催されるいわゆる大学の文化祭にあたり、健康推進課は毎年出展させていただいているのですが、今回は健恋7係が健康づくりについてPRしようということになりました。

近年、若年層の子宮がん患者が増えているので、芸術祭を訪れる若い世代への検診の受診勧奨のため、「就活と恋に効く!キレイと元気のつくり方」というブースを出展。パネル展示を行い、子宮がん検診のアンケート回答者にピンクリボングッズを配布しました。同時に歯科衛生士ともコラボし、デンタルフロスの使い方を動画で見せるなどお口の健康の啓発も実施し、900名以上の方にご参加いただきました。

自分の健康を後回しにしないで

健恋7係では昨年20~50代の女性を対象に事業を実施しようということになりました。今まで、区の主催する健康関連の講習会にあまり参加していただいていなかった層ですが、仕事や育児などに忙しく、自分の健康が後回しになってしまいがちな年代、でも自分の身体も大切にしてほしいという思いからです。現在は男性メンバーも参加していますが、プロジェクトの立ち上げ当初は女性のみだったので、自分や周囲の女性が健康上、どんなことに悩んでいるかを話し合いました。その中で話題に上がってきたのが「冷え」でした。

冷えは肩こりや頭痛、生理痛などいろんな影響を及ぼします。健康推進課の仕事の一つに生活習慣病の予防がありますが、若い世代には重要性がなかなか伝わりにくいのが悩みでした。冷えは、規則正しい食事や睡眠、ストレスをためないなど、実は生活習慣病と対策の内容はほぼ変わりません。女性の方々の身近な悩みである「冷え」を切り口にすれば、興味を持ってもらえ健康づくりのきっかけとなりやすい、また結果的に、私たちが伝えたい生活習慣病予防にもつなげられるのでは?そこから「温活」というキーワードで、冷え対策をテーマに女性向けの講座を開こうというアイデアが生まれました。

冷え対策講座の参加者は平均40歳

こうして開催されたのが2014年12月の「今年こそ、冷え知らずのカラダを手に入れよう♡温活女子講座」、そして2015年7月の第2弾、「冷房になんて負けられない。夏の温活女子講座」です。どちらも内容はほぼ同じで、食事、睡眠、運動、衣服など冷えを防ぐための生活上のポイントをお伝えしました。

昨年の冬は平日の夜、1回は運動編、2回目は生活・食事編と2回に分けて実施しましたが、「平日の夜は参加しにくい」という声があったので、今年の夏は土曜日の日中に1回完結で実施しました。区が実施している一般的な健康づくりの講習会参加者の平均年齢は60歳前後ですが、「温活女子講座」の平均年齢は40歳くらいでした。夏も冬も社会人の参加率が7~8割、区の講座に初めて参加したという方が7~8割を占め、今まで私たちの声がなかなか届かなかった方々に少しでもアプローチできたのではないかと思います。

参加者を集めるために工夫したこと

「温活女子講座は行政が主催する講座とは思わなかった」という感想も多くいただきました。企画はもちろんですが、タイトルやキャッチコピー、チラシやポスターも外注せず、メンバーみんなと相談しながら作成しています。コピーライター講座に半年通い、デザインはまったくの独学ですが、対象とする女性の方々に「参加したい」と思ってもらえるよう、どうしたら気持ちが動くかを考えて作っています。

情報発信についても、「どうしたら届くのか」を考えました。区の情報発信の主な手段といえば区報ですが、対象の年代の方はあまり読んでいないという調査結果もあり、区報には載せず、区のホームページでの告知とともに、区内のカフェや居酒屋、雑貨屋などに開催告知のチラシを置いていただくことにしました。

健恋7係のメンバーが、女性の方が利用しそうな店を一軒一軒訪ねて説明し、お願いして回りました。アポなしでまったくの飛び込みだったにもかかわらず、皆さんとても協力的で快く了承してくださり、冬も夏も30軒ほど置かせていただきました。夏は冬にお願いしたお店に加え、銀行やスーパーなど女性スタッフが多いと思われるところにもチラシを持って回ったところ、職員向けであればいいですよ、と受け取っていただけました。参加者アンケートによると、チラシやポスターを見て申し込んだという方がこの夏の講座では5割近くを占めたので、足で回った効果の大きさを改めて実感しました。

今後は若い人向けのロコモ予防も

お店にチラシを置いて回ることで、街の方々の生の声が聞けたのも大きな収穫でした。講座終了後、協力いただいたお店にお礼に伺うとチラシを手にとった方の反応などいろいろ教えてくださいました。「参加したいけど平日は厳しい」という声もあったと聞き、夏の講座は土曜に開催したという経緯があります。区役所の中にいたのではわからないことを知るきっかけにもなり、温活女子講座は街の皆さまのサポートでできた講座だと感じました。

健恋7係では温活女子講座だけでなく、また違ったアプローチで健康に関する啓蒙を行っていきたいと考えています。また、区内には中小企業が多いので、そうした企業を対象に働く世代の健康づくりも健康推進課で検討しています。

来年2月に企画しているのが「体幹を整える」という講座です。要介護状態となる原因の ロコモ(筋肉や関節に障害が生じ、運動が困難になる状態)予防も、若い世代からの健康づくりが大切です。ロコモ予防も健康推進課の課題の一つですが、身近に感じにくいためか生活習慣病と同じく、働き盛りや若い世代にはなかなかその必要性が伝わりません。そこで「体幹を整えることで体調が改善する」という切り口から、健康づくりのきっかけやロコモ予防につなげられればと考えています。今後も「どうすれば伝えたい相手に伝わるのか」という思いを大事にしながら、活動していきたいと思います。

PROFILE

板垣文緒 さん

練馬区健康部健康推進課健康づくり係 保健師

いたがきふみお:北海道出身、看護師として9年間務めた後、保健師免許取得のため、早稲田医療技術専門学校保健学科に入学。卒業後、埼玉県内の自治体にて1年間臨時職員として勤務。2010年練馬区役所に入庁。石神井保健相談所地域保健係に配属。13年健康推進課健康づくり係に異動。現在に至る。プライベートでは、パーマカルチャーを勉強し日々の生活に取り入れるなど、ヘルシーライフを実践中。